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 お気に入りのアルバム カンタベリー編

グレイとピンクの地
CARAVAN
/In The Land Of Grey And Pink
Golf Girl/Winter Wine/Love To Love You/
In The Land Of Grey And Pink/ Nine Feet Underground
「カンタベリーのアルバムでどれが好き?」と聞かれたら即座にこの「グレイとピンクの地!」です。私をカンタベリーへ導いてくれた記念すべきアルバムです。

一曲目の「Golf Girl」の飄々としたホルン、風に舞うような自由なピッコロの音色、少しおどけたリチャード・シンクレアのヴォーカルはワクワクドキドキです。このアルバム・ジャケットの淡いピンクの風景を形にしたような音色です。

いくつかの組曲を合わせた「Nine Feet Underground」がこのアルバムの最大の聴き所で、前半うねうねとデイヴ・シンクレアのオルガン・ソロが続き、パイ・ヘイスティングスのヴォーカル・パートを含む中盤からストンと落として静かにリチャード・シンクレアが歌い出すところが実に美しいです。キャラヴァン風サイケとでも申しましょうか、サイケデリックですが品の良さが感じられます。素朴で暖かみのあるキャラヴァンの世界がこのアルバムに最大に現れています。

そっくりモグラ
MATCHING MOLE
/Matching Mole
O Caroline/Instant Pussy/Signed Curtain/Part Of The Dance/Instant Kitten/Dedicated To Hugh、But You Weren't Listening/Beer As In Braindeer/Immediate Curtain
メンバーは ロバート・ワイアット(元ソフト・マシーン)、デイヴ・シンクレア(元キャラヴァン)、フィル・ミラー(元デリヴァリー、後のハットフィールド&ザ・ノース、ナショナル・ヘルス)、ビル・マコーミック(元クワイエット・サン)。1曲目の「O Caroline」はカンタベリー屈指のラヴ・ソング。淡々とリズムを刻むドラムと、決して熱く語らないヴォーカルと、キーボード(メロトロンも)のみのシンプルなバラード。でも暖かくて微笑ましい、いつまでも聴いていたい大好きな曲です。普通に聴けるのはこの1曲だけで、「0 Caroline」のエンディングを受けて、「Instant Pussy」が始まります。ソフト・マシーンの1st、2ndのように、切れ目がなく次々と曲が繋がっていきます。

フリー・ジャズというよりは、「一体この人たちは何をやっているのだろう」と勘ぐりを入れたくなるような、型にはまらず自由な演奏をやってくれています。フワフワと漂う浮遊感が心地良い。

ソフト・マシーンを脱退したロバート・ワイアットは理想郷をこのマッチング・モウルに求めたのでしょう。マッチング・モウルのスタジオ盤は公式には2枚しか残していません。R・ワイアットの不慮の事故により、バンドの活動が停止したのが悔やまれます。 できればもっと煮詰めてほしかった。しかし、事故後に復帰したR・ワイアットのソロ・アルバムに、彼が提示してくれた自由で何物にも捕われない高い精神性を持った音楽が受け継がれています。

ヴォリューム


SOFT MACHINE
/Soft Machine
Hope For Happiness/Joy Of A Toy/Hope For Happiness(reprise)/Why Am I So Short?/ So Boot If At All/A Certain Kind/Save Yourself/Priscilla/Lullabye Letter/ We Did It Again/Plus Belle Qu'une Poubelle/Why Are We Sleeping?/
Box 25/4 Lid
カンタベリー・ミュージックの歴史の原点であるソフト・マシーンのデビュー・アルバム。この時点でのメンバーは ロバート・ワイアット、ケヴィン・エアーズ、マイク・ラトリッジの三人。バンド設立の頃のメンバー、デヴィッド・アレンは1stに関わる事なく脱退しました。ソフト・マシーンはメンバー・チェンジを繰り返し、アルバムを発表する毎にジャズ・ロックに傾倒していき、1stとラスト・アルバムでは全くの別物になってしまいました。私はこの1stから3rdまでの初期のソフト・マシーンが好きです。

音はジャズをエッセンスに現代音楽や古典などで味付けをしたサイケなポップ・ミュージック。後々のジャズ・ロックを全面に押し出した緻密な音の始まりは次の2ndを待たなければいけません。

私はケヴィン・エアーズを盲目的に愛していて、彼に関しては正当に評価できません。このアルバムを掛ける度、ダークで退廃的でけだるいケヴィンのヴォーカルがフィーチャーされている「We Did It Again」から「Why Are We Sleeping」までを繰り返し繰り返し聴いてしまい、一人ミニマル状態に陥り眠れない夜を過ごしてます。ちなみに「Why Are We Sleeping」はケヴィンがソロになってからもライヴで歌われます。

後年になってデビュー以前の未発表音源や初期のライヴが発表され、ファンとしては嬉しい限りです。 しかし、それはカンタベリーの歴史を紐解くというよりは、デビュー前のソフト・マシーンの優れたポップ・センスや初期において既に高度な演奏技術を持っていたかがわかるからです。

できればデヴィッド・アレン在籍時の音源の再発を願っております。

バック トゥ フロント
CARAVAN
/Back To Front
Back To Herne Bay Front/Bet You Wanna Take It All 〜 Hold On、Hold On/A.A.Man/Videos Of Hollywood/Sally Don't Change It/All Aboard/Taken My Breath Away/Proper Job 〜 Back To Front
長い間廃盤であったこの『BACK TO FRONT』と前作にあたる『THE ALBUM』が昨年(2004)再発されました。 私にとっては幻のアルバムでしたが、ようやく再発盤で初めて聴く事ができました。

前作でデイヴ・シンクレアが復帰、このアルバムではリチャード・シンクレアが復帰しました。デビュー当時のオリジナル・ラインナップが揃った、ファンにとっては嬉しいアルバムです。

『WATERLOO LILY』をリリース後にバンドを去り、ハットフィールド&ザ・ノース、キャメルと渡り歩いたリチャードのキャリアが随所に感じられます。オープニングの「Back To Herne Bay Front」はハットフィールド&ザ・ノースをポップ寄りにしたようだし、キャメルで一緒に活動していたメル・コリンズがサックスを聞かせる「Videos Of Hollywood」はキャメルっぽかったりします。

デイヴ・シンクレアがヴォーカルをとる「Sally Don't Change It」が一番のお気に入りです。マッチング・モウルの「O Caroline」のように最小限の楽器で演奏されるシンプルな美しい曲です。そして、彼のヴォーカルが優しくて控え目なのも曲にぴったり合っています。

大作「Proper Job/Back To Front」はデイヴのオルガンが全面に押し出され、パイ・ヘイスティングスのヴォーカルも光ります。一番往年のキャラヴァンを思い起こさせる曲でしょうか。でも『IN THE LAND OF GREY AND PINK』や『FOR GIRLS WHO GROW PLUMP IN THE NIGHT』や『CUNNING STUNTS』の最後を飾る大作のような組曲式ではなく、もっとスリムでコンパクトにしたような感じがします。

アルバム全体を通じて、ゆったりとしたリチャード・シンクレアと比べてパイ・ヘイスティングスは気負いがあるというか、固い印象を受けます。『WATERLOO LILY』以降はっきり分かれた二人の個性は再び交わるのは無理だったのでしょうか。この後リチャード・シンクレアはキャラヴァンのアルバム制作に二度と参加する事はなくなりました。

このアルバムを最後にキャラヴァンは活動を休止します。再び復活するチャンスを待ちながら長い眠りにつきます。

ミッシング・ピース



NATIONAL HEALTH
/Missing Pieces
Bouree/Paracelsus/Clocks and Clouds/ Agrippa/
The Lathargy Shuffle & The Mind-Your-Backs Tango/
Zabaglione/Lathargy Shuffle Part 2/Croquette for Electronic Beating Group/ Phlakaton/
The Townplane & The Glider/
Starlight On Seaweed/Walking The Dog(extract)
デビュー前の未発表作品を中心としたコンピレーションです。'96年にリリースされました。
ナショナル・ヘルスはハットフィールド&ザ・ノースとギルガメッシュのメンバーを主に結成されたバンドで、両バンドの音を受け継いでさらに複雑な構成を持つジャズ・ロックを発展させました。

この初期の未発表音源集では、1stの制作に関わることなく脱退したモント・キャンベル(元エッグ)が大きく貢献しています。
モント・キャンベルはエッグでみられたように現代音楽とクラシック色の強いミュージシャンで、ジャズ・ロック主体のナショナル・ヘルスの他のメンバーには受け入れられずに脱退しました。

ナショナル・ヘルスの1st、2ndはいずれも'70年代カンタベリー・ミュージックの完成形として高い評価を得ています。
この『MISSING PIECES』には、もしモント・キャンベルが主導権を握っていたらナショナル・ヘルスは別物になっていただろうと想像する面白味があります。
しかし、メンバーが多いです。ハットフィールドとギルガメッシュ組に加えてスティーヴ・ヒレッジ、ビル・ブルフォードも参加していました。

一番のお気に入りはデイヴ・スチュアートのペンによる「Clocks and Clouds」です。
アマンダ・パーソンズの美声をアラン・ガウエンのエレピやフィル・ミラーのギターがなぞります。そして、エンディングで待ち構えていたようにデイヴ・スチュアートのファズのきいたオルガンが始まると、訳もなく「あー、カンタベリー」と叫びたい衝動にかられます。

最後はほんのさわりですが、R&Bで締め括ります。こういうのが聴けちゃうのも未発表音源集ならではの楽しみです。

7 Year Itch
PIP PYLE
/7 Year Itch
7 Sisters/Chinese Whispers/Strawberry Fields Forever/7 Year Itch/I'm Really Okay/Once Around The Shelves/Long On/Shipwrecked(with Idle Hands)/L'etat Des Choses/Foetal Fanfare Fandango
カンタベリー・シーンを代表するドラマー、ピプ・パイルのソロ・アルバム。'98、リリース。

アルバムがリリースされるまでに7年もかかった苦心の作品です。
このアルバムリリースの後、次のソロ・アルバムを作っているとインタビューで語っていましたが(2002年のインタビュー)、その後リリースの噂は伝わってきません。
果たしてどうなったのでしょう。

インストゥルメンタルなジャズ・ロックだったEQUIPE OUTとは異なるジャズ・ベースの歌物集です。
メンバーはカンタベリー・ミュージシャンと、ピプが活躍の場を移したフランスのミュージシャンが参加しています。
ちなみにメイン・ヴォーカルはリチャード・シンクレア、ジャッコ、バーバラ・ガスキン、ジョン・グリーヴス。
殆どの曲がピプ(もしくは共作)のペンによるものですが、 唯一のカバー曲に、ビートルズの「Strawberry Fields Forever」を取り上げています。

丹念に時間をかけたゴージャスな、大人の為のポップス集です。
所々にハットフィールド&ザ・ノースやナショナル・ヘルスの残り香が漂います。
古きよき時代のカンタベリー・ミュージックを愛する全てのファンに愛される作品集です。

尚、ピプ自身によるライナーにあるアルバム制作にかかわったミュージシャンや曲ごとの解説が、 曲の味わいに花を添えています。


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